しのうしのブログ

たまに外出

十勝平野150万年の地史の観察

十勝平野の変化の過程を帯広市周辺で観察する機会があったので参加しました。

十勝平野
    内湾の時代→湿原の時代→陸化した時代
と変遷してきたそうです。

見学順ではなく、理解できたことを地史の順に整理しました。
プレートは西に移動しています。

◎ 内湾の時代
以前からあった内湾の東側が盛りあがりました。少し西寄りになった内湾が長流枝内(おさるしない)の海。

1.長流枝内層の観察(幕別町豊岡)<150~130万年前>
プレート運動によってできた窪み(沈降地域)を構造盆地といいます。そこに砂礫が堆積した長流枝内層を観察しました。
その頃は大樹付近が湾の入口だったそうです。長流枝内層からは海産のクジラ、セイウチ、貝などの化石が見つかっています。


ここでは、エゾタマキガイなどの二枚貝の化石がありました。肉眼では見づらかったのですが、有孔虫もあるようです。
これらのことから、当時の海水は冷たかったようです。

道路から観察地まで、前日の雨のせいもあり、ぬかるみでした。長靴・軍手・虫除けは大切です。

 

湿原の時代
その後、東部が上昇して、沈降域は西に移動。南部の更別付近が上昇して内湾は出口がなくなりました。南北に長い閉じた渋山(しぶさん)構造盆地ができました。渋山構造盆地に堆積した地層を渋山層といいます。

2.旭の十勝三股火砕流音更町十勝川温泉北)<約100万年前>
約100万年前、十勝三股からの火砕流が流れ込んで、厚く堆積しました。


下が火砕流で、上の茶色の部分が渋山層。両方とも渋山構造盆地に堆積したので、上下セットで堆積しました。


ここで、十勝石(黒曜石)を3個発見しました。あちらこちらと探しまわり、地質の説明は聞き逃しました。

3.国見山の渋山層芽室町西士狩)<80~70万年前>
国見山付近でラミナのある水成層と陸成層(亜炭)の互層を観察しました。


水成層は凝灰岩質砂層(十勝三股火砕流の二次堆積物)。その間に何層かの草木起源の亜炭層がはさまれています。渋山堆積盆は断続的に沈降する沼や湿原だったことがわかります。何層かの中に、海成層が1層あるそうです。
ここの亜炭層は薄いようです。もっと厚いところがあり、亜炭鉱もあったそうです。

亜炭の中にミツガシワ(湖底からのびる多年生の水草)の種子化石があり、見せていただきました。ハムシの化石は見つからなかったようです。

もう一ヶ所の観察地。崩れていたのです(左)。上の方に露頭が見えるので、登ってみました。わざわざ行ったのは3~4人。大変な急斜面を登りましたが、亜炭層はよくわかりませんでした。

 

陸化した時代

4.段丘の形成幕別町途別) <約65万年~13万年前、約5万年前~>
日高山脈南部や石狩山地が上昇し、たくさんの礫が渋山堆積盆に流れ込みました。渋山層の上に厚い古期扇状地を形成しました。それを川がけずり、段丘を作りました。


この場所も少し高いのですが、道路の自動車の後ろ、川の向こう側にもう一段高いところが見えます。

その後、日高山脈の上昇は中部から北部に移り、新期扇状地ができました。それをまた川がけずり、段丘ができました。
十勝平野には9~10段の段丘が発達しています。

5.大山緑地の透水層帯広市西17条)


段丘に沿って東西に流れる小川がありました。そこへ南の段丘崖から幾筋も流れ込んでいました。段丘を作っている礫層を通ってきて、湧き出した水のようです。

参考:忠類のナウマン象化石<約12万年前>  この頃は温暖だったと考えられています。

6.下川西の砂丘帯広市川西町)<約4万年前~>
西の方で火山が噴火しました。偏西風に乗って、十勝平野に火山灰が降ってきました。
この火山灰は、約4万年前の支笏1火山灰、約2万年前の恵庭a火山灰です。25㎝くらい積もったそうです。
その頃は氷期で寒冷乾燥気候だったため、植生が回復せず、砂漠が出現しました。暖かい時期をはさみながら、それぞれ、長く続いたようです。

火山灰が吹き寄せられて、あちこちに小山(古砂丘)ができました。十勝平野の畑をよく見るとうねりが見られます。古砂丘のものもあるそうです。


ここ下川西の古砂丘は、昔から観察地としてよく知られていました。今回行ってみると、なくなっていました。


ここには5年前は恵庭の古砂丘を観察できる所があったのです(写真)。

7.帯広畜産大学十勝坊主帯広市川西町)<約4000年~>
土の盛り上がりです。土壌凍結・凍上と融解、の繰返しで膨らみが形成されるそうです。一般的には「芝塚」、英語で「アースハンモック」。約4000年前の寒冷気候の頃から成長が始まったそうです。


遠いのでよくわかりませんが、それらしく見えるところ。北海道指定の天然記念物です。保全の見地から、入ることはできません。

昨年の十勝坊主観察の記録です。
sinousi-2.hatenablog.com

 

※ 30℃を越す暑い中、説明してくださった先生方、ありがとうございました。